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2019年3月の4件の記事

2019年3月29日 (金)

筋肉について④競技種目と筋線維タイプ~専門家による健康科学情報

先週は筋線維の特徴についてまとめてきました。
一言に筋線維といっても、短距離走に向いている筋線維、長距離走に向いている筋線維について理解してもらえたと思います。
今月の最後は、競技種目と筋線維タイプについて解説していきます。

‐‐‐■競技種目と筋線維タイプ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
先週を踏まえると、短距離系か持久系か、それともどちらも必要かによって必要な筋線維タイプは変わってきます。
まず、短距離系に分類されるものは、陸上競技や自転車競技の短距離種目、走り幅跳びなどの跳躍種目、やり投げなどの投擲種目など、瞬発力が求められる種目です。
これらには、速筋線維(Type IIa線維やIIb線維)が重要になり、高い速筋線維の割合を有していることで有利に働きます。

続いて持久系の競技種目は、陸上競技のマラソンや、自転車競技のロードレース(ツール・ド・フランスなど)、クロスカントリ-スキーなどが代表的な競技種目になります。
これらには、遅筋線維(Type I線維)が重要であり、全体に占める遅筋線維の割合が高いことで有利に働きます。

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最後に、どちらもが必要な競技種目として、サッカーやハンドボール、バスケットボールなどがあります。これらの種目は、ダッシュを短い休憩を挟みながら何度も繰り返すため、瞬発力と持久力のどちらも兼ね備える必要があります。
これらに重要な筋線維は、瞬発力と持久力の両方を兼ね備えたType IIa線維が高い割合を占めていることで有利に働きます。

‐‐‐■競技時間と筋線維タイプ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
続いて、競技時間と筋線維タイプの観点から競技種目を見ていきたいと思います。ここでの競技時間は、連続して運動するときの時間を表しています。
まず、純粋な速筋(Type IIb線維)は、10~20秒程度の運動で重要になります。
つまり、陸上競技の100m走や200m走、自転車競技のスプリント競技です。短時間で大きなパワーを発揮する競技種目です。

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続いて、中間筋(Type IIa線維)は、30~240秒間の競技種目に有利に働きます。
これらは、スピードと持久力の両方が必要になる競技種目、陸上競技の400m~1500m走などです。
最後に、5分以上の運動は持久力が必要になるため、遅筋線維(Type I線維)が重要になります。
陸上競技の5000m走以上の距離やロードレース、クロスカントリースキーなどです。

‐‐‐■まとめ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
今月は筋肉の構造から筋線維のタイプと競技種目の関係性まで、筋肉についてまとめてきました。
筋肉にはまだまだ特徴や魅力がありますので、これをきっかけに筋肉に興味をもってもらえると嬉しいです。

画像出典:

https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/51/51e10d92ef29433889cab220405f54f1_w.jpg
https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/f7/f7f86fb208c6ee9b43488aabd568abe3_w.jpg

Photo
<執筆者紹介>
中村智洋[博士(スポーツ健康科学)]
高校生、大学生年代の自転車競技の指導を行い、エビデンスに基づいたトレーニングを展開。現場での指導とともに、自転車競技のパフォーマンス向上に関する研究活動も実施。

詳細なプロフィールはこちら

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現在レスタでは「スパでセルフメディケーション」というコンセプトのもと、よりいきいきと元気に過ごすための「ご自身による健康管理」を応援しています。
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2019年3月22日 (金)

筋肉について③筋線維のタイプ~専門家による健康科学情報

先週まではすこし細かい話で難しかったかもしれませんが、今週からは、筋肉と運動とのかかわりについて話を進めていきたいと思います。

‐‐‐■筋線維には得意不得意がある‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ダッシュが速い人、マラソンが速い人など、個人個人によって得意不得意があると思います。
実は、これには筋線維のタイプ(特徴)がかかわっているのです。
筋線維は、大きく分けると2種類あり、ダッシュや大きな力を出すことに有利な“速筋(白筋)”とマラソンなどの粘り強さに有利な“遅筋(赤筋)”があります。
お刺身で例えると、速筋はヒラメやタイなどの白身の魚、遅筋はマグロやカツオなどの赤身の魚ということになります。

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もう少し突っ込んでみると、遅筋は1種類ですが、速筋は、陸上の100m走のような一瞬で大きな力発揮を得意にする(純粋な速筋)と400m走から1500m走のようなスピードと持久力のどちらも兼ね備えた中間筋(俗にいうピンク筋)があります。
一般的な人は、速筋と遅筋の割合は1:1くらいであるといわれています。

‐‐‐■持久系の筋線維とは‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
持久系に向く筋線維は、遅筋線維と言われ、Type I線維ともいわれます。
遅筋線維は、素早い収縮や大きな力を出すことには不向きですが、長時間運動するときに活躍します。
遅筋線維には、毛細血管が張り巡らされており、ミトコンドリア量が多いことで、粘り強く動き続けることに貢献しています。

‐‐‐■瞬発系の筋線維とは‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
瞬発系の競技種目に向く筋線維は速筋線維といわれ、速筋線維の中には100m走のような一瞬での力発揮を得意とする“純粋な速筋(Type IIb線維)”とスピードと持久力の両方を兼ね備えた“中間筋(Type IIa線維)”があります。
表にもそれぞれの筋線維の特徴をまとめていますが、速筋線維は素早く動くためや大きな力やパワーを出すために有利な筋線維です。
ここでよく表を見てみると、Type IIa線維は、速筋と遅筋の良いとこ取りをしたような筋線維に感じますね。

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‐‐‐■まとめ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
筋肉は大きく分けると2種類、すこし突っ込むと3種類に分けられます。
遅筋がType I線維、速筋線維の中で純粋な速筋はType IIb線維、良いとこ取りをした中間の速筋はType IIa線維になります。

画像出典:

https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/9f/9fd2ab4c95baa612d768d5361b8abf02_w.jpg

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<執筆者紹介>
中村智洋[博士(スポーツ健康科学)]
高校生、大学生年代の自転車競技の指導を行い、エビデンスに基づいたトレーニングを展開。現場での指導とともに、自転車競技のパフォーマンス向上に関する研究活動も実施。

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現在レスタでは「スパでセルフメディケーション」というコンセプトのもと、よりいきいきと元気に過ごすための「ご自身による健康管理」を応援しています。
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2019年3月15日 (金)

筋肉について②筋線維の構造~専門家による健康科学情報

先週は筋肉の種類について解説しました。
少しマニアックな話(?)だったかもしれませんが、今週もまたマニアックなお話になります。
今週は、筋肉の構造について解説します。

‐‐‐■筋肉を細かく見てみよう‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
みなさんの筋肉のイメージは、図のような両端が細く、中心に向かって太くなっていくイメージではないでしょうか?
では、この筋肉を少しずつ分解してみようと思います。

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まず、図のイメージの状態が骨格筋です。これは、筋束(200本くらいの筋線維の束)が集まったものです。
さらに細かくみると、筋束は1本1本の筋線維に分けられ、その筋線維は筋原線維が集まったものの束になっています。
この筋原線維は、“アクチン線維”と“ミオシン線維”から構成されています。

‐‐‐■筋線維の最小単位‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
筋線維の最小単位は、“サルコメア(筋節)”といわれ、アクチン線維とミオシン線維を含むZ膜からZ膜までの距離で構成されています。
図のように、アクチン線維とミオシン線維が重なって存在しており、重なっているところは暗く見え、重なっていないところは明るく見えるため、これが骨格筋の横紋模様を生み出しているといわれています。

201903152‐‐‐■筋肉が収縮するしくみ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
それでは、筋肉はどのように収縮するのでしょうか?
お分かりかもしれませんが、Z膜とZ膜の距離が近づくことで収縮します。
この時、ミオシン線維がアクチン線維を手繰り寄せてZ膜とZ膜の距離が短くなり、筋肉が収縮すると考えられています。
そして、収縮が終わると、また元の位置に戻っていきます。

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‐‐‐■まとめ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
今週は筋線維の構造や筋肉の収縮についてお伝えしました。
かなり細かい話でイメージもわきにくいところもあったかもしれません。
今週のまとめは、筋肉の最小単位はサルコメアであり、それはZ膜からZ膜の距離であること、その中にはアクチン線維とミオシン線維によって主に構成されていることになります。
最後に、筋肉が収縮するときは、ミオシン線維がアクチン線維を手繰り寄せてZ膜同士の距離が短くなって起こる、ということです。

画像出典:

https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/d0/d0eb06be64db9e03c14f66407344d095_w.jpg
https://www.irasutoya.com/2015/02/blog-post_810.html

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中村智洋[博士(スポーツ健康科学)]
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2019年3月 8日 (金)

筋肉について①筋肉の種類~専門家による健康科学情報

今月は、知っているようで意外と知らない“筋肉”について、解説します。
同じ筋肉でも、筋肉には種類があります。
筋肉は、大きく分けると「見た目による分類」「機能面による分類」があります。

‐‐‐■筋肉の見た目による分類‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
筋肉は、実際に見ることは難しいですが、規則正しい横紋模様(濃いところと薄いところのシマシマ模様)が見られるかどうかという見た目によって分類ができます。
横紋模様が見られる筋肉を“横紋筋”といい、それが見られない筋肉を“平滑筋”といいます。
この横紋模様は、筋肉の収縮に関係するアクチン線維とミオシン線維が規則正しく並んでいるため、シマシマ模様に見えます。
その一方で、平滑筋は、横紋模様がないために滑らかに見えます。

‐‐‐■筋肉の機能による分類‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
見た目による分類以外に、筋肉は機能面、特に自分でその筋肉を動かせるかどうか、という点で分類することもできます。
自分の意志で動かせる筋肉を“随意筋”といいます。
反対に、自分の意志で動かせない筋肉を“不随意筋”といいます。
具体例を挙げてみると、力こぶができる二の腕(上腕二頭筋)やたくましい太もも(大腿四頭筋)は、自分の意志で動かすことができるので随意筋です。
内臓のようにその時々に応じて自動的に調節されていて、自分の意志で動かすことができないので不随意筋です。

‐‐‐■筋肉は大きく3つに分類される‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
横紋模様があるかどうか、自分の意志で動かせるかどうかを含めて考えると、筋肉は以下の3つに分類されます。
① 横紋模様あり・随意筋  → 骨格筋
② 横紋模様なし・不随意筋 → 内臓筋
③ 横紋模様あり・不随意筋 → 心筋

①骨格筋は、
先ほど出てきた上腕二頭筋や大腿四頭筋といった、自分の意志で動かせる筋肉です。英語では“Skeletal muscle”といいます。


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②内臓筋は、
胃や肝臓、血管などの心臓を除く内臓の筋肉です。横紋模様がなく滑らか(スムース)に見えるため、英語では“smooth muscle”といわれています。

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③心筋は、
心臓の筋肉ですが、常に血液を全身に送り届ける必要があることから、一定のペースで収縮(心臓が拍動する)できる機能を有していながら、横紋模様もあるため、独立した種類です。

‐‐‐■まとめ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
一言で筋肉といっても、横紋筋や平滑筋、随意筋や不随意筋など、形態的や機能的な特徴により分類されます。
みなさんが一番馴染みがあって、トレーニングして鍛える筋肉は、厳密には骨格筋なのです。

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画像出典:

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https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/ac/acbd1f74aae3532b96ec79667dbc9bde_w.jpg
https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/7e/7e410cf91919c3cab382d6daa4f55454_w.jpg

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<執筆者紹介>
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